誰かの地元、英賀保。

誰かの地元、英賀保。

2025年1月、姫路市英賀保をウロウロしました。

今回のまち歩きマップ

今回は、ウロウロ〜カル初詣シリーズ3年目。(2023年は生駒の宝山寺生駒聖天、2024年は宝塚の清荒神でした。)今年は姫路から西へ一駅、英賀保(あがほ)にある英賀神社に参詣しつつ、その周辺を散策します。案内人は英賀保で生まれ育ち、現在は神戸でお仕事をしながら演劇活動をされている山本紗織さんにお願いしました。

難読地名が多い

集合場所はJR英賀保駅ではなく、山陽電鉄網干(あぼし)線の西飾磨(にししかま)駅。ここからじわじわと北上して英賀神社を目指し、JR英賀保駅にゴールするルートです。ちなみに西飾磨駅の二駅前は妻鹿(めが)駅でした。難読地名が多い。

山陽西飾磨駅に降り立つと特に何もない。と思いきや、駅前のミニロータリー的な場所に立派な案内看板が立てられていました。しかし車道キワキワに車道に向いて立てられているため、案内板を読むには少し危険が伴います。英賀保、一筋縄ではいかない予感。わくわくしてきました。

車道に立たないと看板読めません。スリリング。
名所の説明書きではなく、地割(道路)グリッドの衝突にテンションがあがっているウロウロ〜カルクルーのツツイ。

駅周辺には、看板が設置されているロータリーエリア以外にも、中途半端に余った土地をつかった憩いのベンチゾーンや、駅前駐車場とみせかけた運輸会社専用駐車場、年季の入った飲食テナント施設(一部別業態にコンバート済み)、ワイルドな無料自転車置き場など、味わい深いポイントが多数あり、「地元感」が溢れだしています。

ここで憩えるかどうかがウロウロ〜カルクルーに入れるかの分かれ目。
渋みが効いてる喫茶店「ブラジル」居酒屋「ドンキー」の並びにポップな「タノシキッズ」が参入。
私たちは自転車がめっちゃ並んでるだけでも楽しめます。

とりあえず路地で

西飾磨駅の西を流れる水尾川を渡り、古い集落のエリアへ。真っ直ぐ伸びるやや狭い道路沿いに、蔵付きの大きな家やレトロな商店が並び、家屋の間を細い路地がうねっています。正統派の街道沿い集落でまち歩き的には最高の滑り出し。しかし山本さんいわく、この辺りは移動が車ベースなので、車が入っていきづらく運転に気をつけないといけない、「せせこましいとこ」と呼んでいるということです。なるほど、確かに生活をしている地元民にとってはそうですよね。

水尾川を渡る手前で見つけた標識。自転車モチーフを強引に使った結果、シュールな画面になっているのがグッときます。
旧街道らしい道路ギリギリに建物が並んでる感じ。手前の理容室がおしゃれです。
グググッと路地に入り込んでいくY字路。
今回案内していただいた山本さんの後について風情のある路地を歩きます。

中世の英賀保は山、川、海に囲まれた地形を利用した英賀城という巨大な要塞都市でした。しかし戦国時代に秀吉によって街は跡形もなく滅ぼされてしまったそうです。その広大な城の跡であることを示す石碑や案内板が点々とあります。

デカい上にちょっとした庭園風植栽オプションもついた豪華な英賀城本丸跡の石碑。

路地を散策していると、とあるお家の中から、小さなお子さんが太鼓で遊びながら何かを歌っているのが聞こえてきました。すると山本さんが「あ、これはお囃子の練習ですね!」と教えてくれました。姫路を中心とした播州は、秋のお祭りがまちのアイデンティティ。地区によって開催日が決まっており、その日が平日なら学校は公休になり、大人は仕事を有給で休みます。英賀保地区は毎年英賀神社で10月17日・18日に例大祭が開催されます。子どもたちが祭りの英才教育を受けて育っていく土地柄を垣間聞くことができました。

町ごとに祭りの際に曳き回す屋台があり、屋台を収納する屋台蔵があります。こちらは水尾川沿いで見つけた中浜の屋台蔵。

英賀保スターロードそしてとんとんへ

路地エリアを北に抜けると、大きな交差点にぶつかります。この交差点、少し様子がおかしい。十字路ではなく、なんと五叉路になっており、交差点名は「英賀五差路」。地図で見るときれいな「大」の字になっています。英賀保のスターロードと呼びたい。5方向に伸びる全ての道が幹線道路級の大きさなのですごい迫力。初めて車で通る人は混乱するだろうなぁ。

真っ直ぐの選択肢はなく分かれに分かれていきます。
道路に斜線部分がやたら多い。

スターロードを北に渡ると、看板がファンキーなお好み焼きさん「とんとん」があります。山本さんの実家が外食するときにはお馴染みのお店だそうです。この日はここでお昼ごはんにすることにしました。

素敵な店構えに吸い込まれていきます。停められている自転車にはみんなハンドルカバーが。英賀保で流行っているのでしょうか?

メニューが豊富であれもこれも頼みたくなります。山本家では毎回定番の豚たまを頼んでいて、あまり他のものは食べたことがないとのこと。なるほど、なんとなく馴染みの店あるあるな気がします。せっかく大勢できたので、気になるものを次から次へと注文。お好み焼きの生地がフワフワでどれも美味しい。小上がりの座敷席も心地よくて、予定以上に食べまくり、長居してしまいました。お腹も膨れて満足感でかいのでもう帰ってもいいのでは…?という、気持ちになりつつ後半戦へ。

そば飯、ちから焼き、しそ豚焼き。どれも美味しい。

だいぶ食べた後でしたが、気になり過ぎてえいやっと注文した英賀保モダン(うろ覚え)。頼んで正解でした。
とんとんの近くで見つけた、取水と洗剤の投入がワイルド過ぎる洗濯機くん。

英賀神社に詣でます

今回はウロウロ〜カル恒例の初詣企画ということもあり、英賀神社に向かいます。英賀神社は、創建が奈良時代まで遡ると言われ、英賀保という地名の由来にもなっている歴史ある神社。秋の例大祭もこの英賀神社でとり行われます。社殿に奉納された大きな絵馬の数々や、毎年寄進によって整備されていることがわかる石柱、その他にも様々寄贈によって更新されている施設や備品が目につき、地域の人々からの信仰が篤いことが感じられます。境内の脇には椅子とベンチ(もちろんこれも寄贈品)が設けらており、常連さんが談笑している姿が目に浮かびました。

訪れた時は1月でも後半だったため、参拝される方の姿もなく広い境内は静かでした。
毎年奉納によって石碑が増えていくようです。
例大祭では、この拝殿前まで屋台が入宮し「練り上げ」と呼ばれる屋台を担ぎ上げるパフォーマンスが行われるそうです。
立派な社殿の中にシンプルなセルフおみくじ。今時100円は安い。
おみくじで盛り上がるウロウロ〜カルクルー。
境内の憩いスペースで休憩。気持ち良い。
休憩中、山本さんが例大祭の写真を見せながら解説してくれました。屋台もすごいのですが、ハシゴの上で舞うアクロバティック獅子舞が圧巻だそうです。生で観てみたい。
新しい拝殿の奥に建つ渋い神殿が山本さんのお気に入り。
2月11日には餅まきが行われます。このポスター「景気良くまき過ぎでは?」と思いましたが、実際、”重さ1.2トン・個数にして30,000個”(英賀神社公式サイトより)のお餅がまかれるそうです。

駄菓子屋とタコ公園のゴールデンコース

神社の裏手には英賀城跡公園があります。かつて英賀城の本丸がこの付近にあり、モニュメント的に石垣が復元されていました。しかし、石垣に子供が登ると危険ということ(山本さんも子供のころによく注意されたそうです)と、この公園が秋祭りの際の各町の待機場となっており、スペースを確保したいということで、少し前に石垣が撤去されたとのこと。さすが祭ファーストの地域。

砂地が見えている所が石垣の跡。確かにけっこう場所とってましたね。いや、しかし…。

英賀城跡公園の隣は野球グラウンドも併設された矢倉公園。この公園にはレトロでかわいいタコ型の滑り台があり、通称「タコ公園」と呼ばれているそうです。

山本さんによるとこの通称名には罠があるとのこと。小学校区単位では、タコ公園とといえば矢倉公園でまちがいないのですが、実は隣の小学校区にもタコ滑り台が設置されている公園があり、やはり通称は「タコ公園」。この2つの小学校は同じ中学校に上がるため、違う小学校出身者同士が「タコ公園」で待ち合わせをするとすれ違いが発生する…。なるほど!と思いましたが地元民以外にはどうでもいい話。でも、そのどうでもよさが愛おしい。

タコ滑り台について調べてみると、矢倉公園にあるフォルムと似たものは各地にあり、どうやらスタンダードとなる原型がありそうです。原型があるとしても、現地の職人のよるニュアンスが出て味わい深い。デンマークのコペンハーゲンには世界各地の遊具を集めた「Superkilen(スーパーキーレン)」というコンセプチュアルな公園があり、そこになんと同タイプのタコ滑り台が設置されています。ただし、黒塗りでモード系タコになっててなんかちゃう。

 タコ滑り台の芸術的な造形。タコの足にあたる滑り台部分もバリエーションがあり楽しい。コンクリート製の遊具自体が減っている今日この頃、懐かしさを感じます。
ここからしばらく遊具で遊ぶ大人たちの姿が続きます。

矢倉公園の斜め向かいに駄菓子屋さんがありました。かつては他にも店舗が入っていたであろう、地域のショッピングセンター的建物の中で唯一営業中。そういえばタコ公園に駄菓子の空袋が落ちていました。ここで駄菓子を買ってそのまま公園に遊びに行くゴールデンコースが確実にありますね。山本さんによると、この駄菓子屋さんは「ショップ」と呼ばれていたそうです。放課後に「今日この後ショップに集合な?」なんて会話が想像できます。大人たちが大人気なく駄菓子を爆買いしたのと入れ違いに、小学生たちがショップに駆け込んで行きました。

「雪屋かし店」という看板がひっそりとありましたが、その名前は山本さんの口からは一切出てきませんでした。ここは「ショップ」なのだ。
駄菓子の陳列に特化した平台。大人だから気になるものは全部買えます。
おはじきやビー玉のバラ売り。エモさを感じます。
買い物後、すっぱい液体がでるスプレーで楽しむ人たち。

駄菓子屋さんから少し歩くと今日のゴール、J R英賀保駅に着きます。英賀保駅はこの時改修中で、もうすぐ駅をまたぐ連絡通路がリニューアルするところ。英賀保駅は何気に貴重な木造の旧タイプ駅舎で渋かわいいのですが、改修が進むと建て替えられてしまうのでしょうか。

駅に向かう途中、公園で見つけた石のバトルロワイヤル。
同じ公園にて、犬くそ看板の穴埋めクイズ化。
普段利用されている人たちは気に留めてないかもしれませんが、このタイプの駅舎は貴重なのです。

山本さんに案内してもらった誰かの地元、初めての場所で当然新鮮でしたが、何故か懐かしさも感じるナイスな地元でした。

オススメのお店情報
とんとん
兵庫県姫路市飾磨区英賀宮町1丁目14−2
営業時間:11時30分〜14時,17時〜21時
定休日:月・火曜日

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