2025年12月20日、福井県大野市で行われた「みんなみんわ博」に、ウロウロ〜カルクルーのツツイが個人活動として行っているZINE(個人やグループで制作される冊子等)の販売で出店することになりました。「せっかくおもしろそうなローカルに行くなら!」とイベントの様子と大野のまち散策を記録してきました。
大野市との縁、みんなのみんわ博へのお誘い
大野市との出会いは、以前のレポート記事「平野らへんでページをひらって綴る」の中でも触れた、福井県大野市・池田町で、文化として意識されないような文化、暮らしの中の営みや物事、言葉が消えてしまう前に記録するZINE「山の民」とそれを作る4人に出会ったこと。それ以来、大野や池田に行き「山の民」に刻まれたまち自分の目で見てみたいと思っていました。

その後、大野市でフリーのイラストレーター/デザイナー/編集のお仕事をされている、キムラユキさんと神戸の展示に参加されていた際に知り合い、今回開催される「みんなのみんわ博」へ出店のお声がけをいただきました。これは間違いなく縁がある。キムラさんには今回のレポートを書くに当たってご協力もいただきました(ありがとうございます)。
キムラさんも企画・運営に関わっている「横町編集部(*1)」は、大野では古くから民話が身近にあることに注目、大野の民話を学び自分たちで新しい民話をつくるプロジェクト「みんなのみんわ」を2025年にスタートしました。複数回のフィールドワーク、ワークショップを重ね、今年の活動のまとめとして、「みんなのみんわ博」が開催されることになったそうです。キムラさんによると
「これまでのワークショップでは、お話を作り、挿絵を描くところまでを行いました。そのため、今年の最終回となる、みんなのみんわ博では”それ以外の手法でも民話と触れ合える1日になったらいいね”というアイデアがでました。人によっては歌うのが好きな人もいれば、遠くから見てるだけでいい人もいるし、買いものを通じて何かを感じてくれる人もいるはず、というところからです。初めて来た人でも立ち寄りやすいブースを、という意図もあり物販も入れることになりました。」
このような背景があり、みんなのみんわプロジェクトに関する展示や民話にまつわる場所を巡るまち歩きマップの配布とともに、飲食、物販、トークイベント、ワークショップを組みわせ、まちなかの複数の拠点を使った複合的なイベントとなったようです。
*1)横町編集部の補足
2018年に締結された大野市と関西大学の地域連携により地域拠点「横町スタジオ」が開設された。横町編集部はこの横町スタジオの持続的・自律的運営を目的として設立された団体。大野市をモデルに研究、教育、まちづくり事業の実践に基づいて、「都市部に集まった学生を地方へ再分配すること」をテーマに仕組みづくりと環境構築のケーススタディを行っている。
具体的には、建築・都市・まちづくりの専門領域を活かした横町スタジオ拠点づくり事業を基盤に、コンポスト開発事業、出版事業、マルシェ事業、シェアスペース事業を実施。そのほかにも、大野市内のエリアマネジメント領域において、空き家利活用事業や地域活動のコンサルティング事業、ワークショップ事業も実施している。
神戸から大野へ、山間を抜けて。
大野市は、福井県の中でも石川県と岐阜県に挟まれた山岳地帯の盆地にあります。つまり、神戸からは結構遠いということ。大阪駅から敦賀駅、さらに越前花堂(えちぜんはなんど)駅と、電車の遅れに肝を冷やしつつ乗り継ぎ、山間を一両編成の旧式車両に(激しく)揺られていると、ある瞬間、山間を抜け視界が開け、平地の先に山々のパノラマが展開されました。地図上ではわかっていたけど、大野って本当に絵に描いたような盆地なのだと小さな感動。
みんなのみんわ博のメイン会場は、平成大野屋平蔵という土蔵を改修し、貸し館として活用されている文化財の建物。外観は伝統的な日本建築に見えますが、戦後に織物需要を背景に建築され、広い空間でも柱がないのが特徴とのこと。確かに、伝統的な土蔵よりも中が広い。しかしこの日は20組程度の出店者が蔵内にぎゅうっと配置され、結構なみちみち感です。


出店しに来た、そしてイベントを全力で楽しむ
出店者は福井県内を中心とした近隣の北陸勢に加え、関西からもちらほら。雑貨、ドライフラワー、ZINE、狛犬(?!)などそれぞれ出店者の個性が出ていました。もちろん山の民チームも出店しており、私の隣のブースでした。自分の設営が終わったら早速山の民の最新刊を購入。そして山の民メンバーで大野市在住の桑原さんから、今回の第4号に掲載されている「喫茶エミ」や、これまでに取材されたハンコ屋さん(の跡地)、銭湯の情報を聞くことができ、イベント後の大野市ウロウロプランが捗ります。
印象深かったのが、学校の同級生だった、かまたにさん・たなか島さんによるZINE「なんやこれ」。現在かまたにさんは東京に、たなか島さんは福井に住んでおり、写真と文の交換日記のようなスタイルでZINEを制作し、大野市のリソグラフ(簡易印刷機)やシルクスクリーンの印刷スタジオ「大野の印刷・編集室 みなと」で印刷をしたということです。同級生のつながりが住む場所を超えて印刷され、形となった冊子にグッとくる。
民話や怪談にまつわるトークやワークショップは平蔵以外の拠点で行われました。トークイベント中は各会場の外まで人が溢れ、それが終わると平蔵にどっと人が流れ込み、イベントによって大野のまちなかを人が移動しているのを感じました。
自分のブースを抜け出し他の会場を巡っていたところ、去年(2024年)福井県高浜町のUSFESに呼んでもらった藤本さんとばったり再会するなど、出店もそこそこに楽しんでいると、あっという間に終わりの時間が近づいてきました。







みんなのみんわ博に参加して大野の今の動きが見えてきた?
イベントのクロージングに、みんなのみんわ企画・運営の方たちから、これまでの活動の振り返りの共有。新しく民話を作るプロジェクトとして走り始めましたが、リサーチしていく中で「民話は作るものではなく語り継がれるものでは?」とコンセプトが覆りそうになったこと、しかしその後に訪れた「これって民話が生まれる瞬間では?」と感じた出来事、そして行き着いた「民話はこどもの”きかさてきかせて”が、原動力で残ってきた。残っていくほどおもしろい話ができたら、新しい民話が作れるかもしれない。」という紆余曲折のエピソードが印象的でした。
新しく民話を作るというチャレンジをしたことで、民話の本質を深く知ることができたのではないかと感じました。自分たちでやってみることがめちゃくちゃ大事だなと改めて気付かされます。みんなのみんわプロジェクトは、来年以降も継続予定ですが、具体的な展開はまだまだ相談中とのこと。例えば地域の子供たちの参加など、もっと間口を広げるためにどうしたらいいのかという議論があるようです。
イベント終了後、出店者や関係者による打ち上げが横町スタジオで行われました。同じテーブルになった関西大学の学生たちと話していると、こういったプロジェクトに参加することで単位が取れるわけでもなく、純粋に自分の興味がある活動に参加しているとのこと。そして現役の学生だけなく、卒業後も継続的に大野市を訪れ、プロジェクトに関わっている方もいました。
また、この日私が宿泊するアラシマホステルは、まちの中心にあるビルを改装して2020年開業した新しいゲストハウス。前述の大野の印刷・編集室みなとは2023年から活動をしているようです。みんなのみんわ博のスタッフにはアラシマホステルや、みなとの関係者もいるとのことで、横町スタジオ/横町編集部と併せて、こういった新しい動きがまちに何か影響を与えているのかも?と気になり、キムラさんに聞いてみました。
「印刷所の立ち上げや宿が増えたことで、体感ですが、これまでにはなかった、観光以外の目的で大野に来る人(観光客の方は、おとなりの勝山市の恐竜博物館を目的に訪れる人が多い)が増えてきたように思います。リソグラフがある印刷所はある程度限られるので、福井市方面や金沢・富山方面から印刷目的で人が来たり、他県でリソグラフをおいてる印刷所の方がSNSで大野のことを見てくれたりもしているようです。ありがたいことに、私の関西の知り合い2名が、みなとのリソグラフで遠隔で印刷を依頼してくれました。」
なるほど、いわゆる「観光」ではない入り口からまちに関わる、訪れるという動きが生まれつつあるのかもしれません。




雪がなくても雪が見える
翌日、まずは桑原さんから話を聞いた喫茶エミで朝食。それから昨日出店を抜け出して会場を巡った際に気になった場所や、アラシマでもらった地図などを頼りに、大野のまちをぐるっと歩いてみました。
大野は福井の中でも豪雪地帯で、雪深い中を歩く覚悟もしていたのですが、拍子抜けするほどの暖かい週末。しかし、大きく張り出し屋根を支える機能も兼た袖壁(うだつのような仕切り壁)、植栽の冬囲い(縄巻き、竹囲い、雪吊りなど)、除雪用重機(小さいやつがカワイイ)、大通りの丈増し紅白ポール。屋根にかけられた梯子、融雪ポンプの制御盤、大通りの交差点に吊り下げられた除雪スコップなど、まちの様々なものが雪国の景観を作っていました。まだ降っていない雪が見えるぞ…。
キムラさんによると、冬になるとお年寄りの方はずっと雪かきしているとのこと。
「これは私の仮説ですが、冬はやることがあまりなく、家の中にいても暇なので、かかなくてもいい雪までかいているのではないかと思っています 笑。」
さらに
「大野は”特別豪雪地帯”ですが、昨年は福井市方面もかなり積雪があり、中には除雪が追いついていないところもありました。そんな状況の時に、もっと降っているはずの大野の道が通りやすく感じて、ありがたさを感じました。(日頃積雪の多い地域ほど、除雪の体制が整っているかもしれないです。)」
という話も聞かせてもらえました。やはり、大野まちの姿に雪は大きく関わっている。民話にしても、深い雪に閉じ込められる地域では家の中で過ごす時間が多くなるため、娯楽として家々で語られる話が民話となって残ってきたとも考えられます。









大野冬囲いコレクション2025



ゆっくりと新陳代謝してきたまち
大野はどこを歩いていても地面から水の音が聞こえます。盆地という地形のため周囲の山々から水が流れ込み、地下水を汲めるエリアに城下町が設計されたのこと。地形とまちづくりが昔から結びついている。そしてまち中は今でも地下水を生活水にしているそうです。
そしてお昼は事前に目をつけていた「ときわ三番店」へ。昭和な店内とガラスの向こうの瀟洒な中庭が最高。大野名物が一緒に味わえる、おろしそばと醤油カツ丼のセットを注文。福井といえばソースカツ丼が有名なのですが、大野は醤油の生産地であることからソースではなく醤油カツ丼が開発されたそうです。ごはんが少し冷めていたけどお米が美味い。上に載ってるダイコンの辛味と醤油がさっぱりしていて軽く食べられました。そばも大根おろしが効いていて、ボリュームもちょうど、胃を重くしたくないまち歩き好きには理想的なお昼ごはんでした。
城下町として発展した大野のまちは、明治時代に大火により消失しましたが、その後に再建された姿が現在もよく残っています。大きな古い商店、酒屋さん、和菓子屋さん、そしてお寺が多い。100年以上かけてゆっくりと新陳代謝をしながら続いてきた連続性を見ることができる貴重な、そして美しいまちだと感じました。お酒や醤油づくりにちなんで、熟成とか発酵という言葉も当てはまりそうですね。









最高のお土産をつくる
荷物を預けていたアラシマホステルに戻ったところ、この日は近隣店舗が共同してクリスマスイベントを開催中。そして昨日は山の民ブースにいた桑原さん、みんなのみんわスタッフをされていた響さんが、「大野の印刷・編集室みなと」のポップアップとしてシルクスクリーンワークショップをやっておられました。自分で書いた絵柄をその場で製版してサコッシュに印刷できるとのこと。もちろん、シルクスクリーン体験させてもらいます。
午前中にまち歩きで撮った写真から、ときわのロゴ、雪人形、植栽の冬囲い、アラシマホステルが入っているいいビルをサンプリングした絵を描くことに。一発描きなので緊張してバランスがうまくとれなかったけど、とても楽しい。製版を待っている間にイベントで販売されていたドーナツとチャイでおやつタイム。出来上がった版にインクをのせてもらい、自分でサコッシュに刷り上げ最高のお土産が完成しました。まち歩きのアウトプットとして印刷物をその場で作れるの良過ぎる。みなとの2人とも「またやりたいですねー」と盛り上がりました。
桑原さん響さんとアラシマホステルに別れを告げ、越前大野駅までの道中で大野名物の丁稚羊羹(お店によって味が違い、地元の方はひいきのお店があるそうです)を買いつつ帰路につきました。神戸は北に六甲山、南に瀬戸内海があり、東西にだらーっと広がるまち。大野は山に囲まれサイズ感が視覚的はっきりとしている。身体的な感覚が全然違う。そして、街並み、音、たった2日の滞在でしたが、目隠しして大野に放り出されてもすぐに「ここは大野だ」と分かる自信がつきました。





