川西で幕の内弁当的まち歩きを

川西で幕の内弁当的まち歩きを

2026年3月、兵庫県川西市の駅周辺をウロウロしてきました。

今回歩いたのはこのあたり。

川西に「川西駅」はない

兵庫県南東部に位置する川西市は大阪府と接しており、大阪・神戸の都心へアクセスしやすいベッドタウンです。ちなみに川西の「川」は市内を流れる猪名川のことで、一部が大阪府池田市との市境になっています。

今回の案内人は、川西市職員であり、「ぶっちぎりLab.」という川西市を拠点に『地域であそぶ』団体を主催し、「秘密結社チルミナティ」「ファンシーショップ物欲」「百鬼夜行」「こども激チャラ⭐︎ナイトプール」など謎の活動を開催または関与している、田中英一さんにお願いしました。田中さんは元々バックパッカーで、世界を巡っているときにファイヤーダンスを習得したらしいです。

阪急川西能勢口駅に集合。「川西の中心駅だけど、お隣(北側)の能勢町の名前も入ってるな」と思いながら、南側にあるJRの駅名を見てみると「川西池田駅」と、こちらは東隣の池田市が入っている…。調べてみると、どちらも元々は「能勢口駅」「池田駅」と、むしろ「川西」の名前が入っていなかったようです。川西を応援したい気持ちが芽生えてきました。

駅北側には未来的な塔が(京都タワーに似ている気がする)そびえる。
謎の石像前で田中さん(右から2人目)から駅周辺のマル秘情報を教えてもらう我々。
ほのかに詩的表現を感じる注意看板(駅南ペデストリアンデッキ)

栄町|高度成長期住宅開発の痕跡

駅から北へ向かってまち歩きスタート。川西の中心地ですが、面的に大きな商業エリアはなく、すぐに住宅が密集した地区に入りました。駅の北側にあたる栄町・中央町は、1960年代以降、高度成長期に一気に住宅化が進んだようで、当時の雰囲気をとどめる区画が残っていました。高密度で歪んだ区画や、強引に建てたことによる動線の不整合など、当時の強烈な住宅需要の残滓を味わいながら歩きます。

西友川西店(再開発のため2024年11月閉店)跡地の裏を北に抜けたところ。ガードレールの支柱だけが残っていました。確かにガードレールあると家に入れなくなりそう。この姿になるまでの経緯が気になります。
路地から見える駅前再開発の風景。こういうのにぐっときます。
駐車場の入り口に残置された電車の廃車両を利用した廃喫茶店。車両設置のため穴まで掘ってある。たぶん、撤去費用がかかり過ぎてそのままにしたと推察。
文字も劣化した塗装も芸術的。できればこのままずっと保存(放置)されて欲しいところです。
レトロ感のあるナイスなアイスのイラストも発見。勝手にステッカーにしたいですね。
取り壊された建物の跡が隣の壁に残っていることはよくあるのですが、壁そのもの(だけ)が残っているのは初めて見ました。すごいし意味がわかりません。

花屋敷|宝塚の盲腸を登る

栄町の北には花屋敷山手町という、その名の通り丘の上の住宅地があります。なかなか傾斜がきつい丘陵にあるのですが、実はこの丘の南側の「斜面地だけ」が西隣の宝塚市。市域が盲腸のように飛び出ており、宝塚市花屋敷荘園1丁目の一部になっています。
ということは、ふもとの栄町から急な階段を登っている間は宝塚市で、階段を登り切ると再び川西市ということになります。これも「何故こうなった…?」と、疑問が湧くのですが、調べきれておらず、謎のままです(情報お待ちしております)。

宝塚市の盲腸を横切って花屋敷山手町にたどりつき、東に進みにながら丘を緩やかに下りていきます。川西市立総合センター(コミュニティーセンター)と駐車場(この駐車場も扇形で変な区画)の間を流れる用水路の上にかけられた人道橋?遊歩道?よくわからん小道を通って駅前につながる大通りに戻ってきました。
目まぐるしく景色が変わり、頭に?マークが点灯しっぱなしです。我々は川西に翻弄されている!

川西市栄町から宝塚市花屋敷荘園へアクセスする階段の一つ。階段が急過ぎたのか、階段の上に階段をかけ直しています。手前の幅が広い階段も、手すりによって右側がトマソン(無用)化しています。計画性大事。
花屋敷山手町へ通じる階段。容赦ない。そしてこの階段も含めて傾斜に建つ家は宝塚市であります。
階段が急すぎると人は笑ってしまうのである。現在宝塚市を通過中。
宝塚市で休憩中。人工芝をクッション代わりに敷いてくれる宝塚市民の優しさ。
花屋敷山手町まで登り切って振り返った景色。途中で腰の曲がったお年寄り、ベビーカーを畳んで登る家族とすれ違った。大変なことだ。
花屋敷山手町を下っていくと出現するカーブミラー。「中島」とは誰なのか。中島に注意しろということなのか、中島専用のミラーなのか、謎が謎を呼ぶ。
用水路の上に架けられた歩道。すれ違い用の待避場所も設けられている。
フェンスの向こうを見ると、かわいいイラストが目を楽しませてくれる。

川西能勢口東|駅前のゴチャゴチャを味わう

川西能勢口駅まで戻り、駅の東側のごちゃっとした所に突入します。古くからある駅前の繁華街といった感じで、狭い路地に年季の入った建物が並びます。
高架線路の南側は空き店舗や空き地になっている所も目立ちますが、とある一角にビリヤニのお店や、クィア・フェミニスト・カフェ、シナモンロール専門店とちょっと尖ったお店が集まっている場所がありました。また、知る人ぞ知る豚串焼きのお店や、蔦の絡まる水上建築などもあり、味わい深いエリアでした。
線路をまたいで(くぐって)北側。こちらは現役のスナック・飲み屋街となっていました。「チロリン村」と称する通りで見つけた中華料理「大王」の佇まいに惹かれます。田中さんもおすすめということで、「大王」をこの日のゴール地点に設定。

あまりにも人の手が過ぎる注意看板(多言語対応)。AI生成の対極の存在がここにある。
先ほどの注意書きを進んだところ。道路敷地の境界がはっきりし過ぎている。タイル張りの方のスロープ別にいらんやん。
元焼肉屋でしょうか、庇一体型3連ダクトがかっこいい。
この区画一帯で、ちょっとした祭りが開催されることもあるとのこと。路上の自主的活用、すてきです。
シナモンロールとコーヒーのお店「Bakery Cinano」でおやつを食べながらお店の方とお話し。神戸の塩屋ご出身ということで、神戸住まいの我々は少し親近感。
豚串焼きの「たからや」はまだ営業前だったけど、横の路地で猫に会えました。
駅北側のスナック街「ちろりん村」というらしい。
気合いが入ってる。
見上げると、空を覆う電線。
白斑の極太書体と破れ具合、寄り添う植物もあいまって存在感がすごい提灯。

小花|時間を遡る路地に迷い込む

再び、線路の高架をくぐって南へ。大きなマンション「シャンテ川西」と波型の屋根が特徴のみつなかホールの間を抜けると、突然、昭和にタイムスリップしたかのような、木造の平屋が密集する区画が現れました。駅の南東に位置する小花(おばな)は川西が住宅地として開発される前から集落があった場所で、古民家と入り組んだ細い路地がまだ残っています。

先ほど通り抜けたシャンテ川西は、昭和30年代に川西の商店の中心となった「新町市場」の跡地で、周辺には劇場や銭湯もあり大変賑わった場所だったそうです。
近年は建て替えは進んでいるようで、古民家が数軒集まっていたブロック丸ごとピカピカの豪邸になっている場所もありました。

小花のとある一角。次の朝ドラのロケはここにしましょう。
庭や路上の緑に彩られて気持ちの良い路地。これでも道幅が広いほうで、もっと細い所は狭過ぎて写真に収められませんでした。
路地の向こう側に見えるのがシャンテ川西。昭和と平成のコントラスト。
シャンテ川西前の電柱に残る新町市場の記憶。

猪名川河川敷|高速道路の建設によって生まれた龍の珍スポ

小花を東に抜けると、猪名川の河川敷に突き当たります。川西は九頭竜伝説など、古くから龍にゆかりがある場所とのことで、この河川敷の上に高速道路(阪神高速道路池田線)が建設された際に、『地元の皆さんの提案を受け、高速道路を龍に見立てた構造にし川西龍の道と名付けています。(川西市HPより)』とのこと。そして、その下に作られた公園は「ドラゴンランド」と名付けられ(!)、龍をモチーフにした133mの長大遊具が設置(!!)されました。

唐突かつ熱烈なドラゴン推しに困惑しつつ、せっかくなので龍の長大遊具(そもそも長大遊具っていう言葉は他で使われているのでしょうか?)にライドしてみました。龍に見立てた輪っかの中を歩くだけなんですが、いい塩梅の勾配と見晴らしの良さから生まれる謎の浮遊感があり、なんだか楽しくなりました。
また、河川敷から道路を渡るための横断歩道も龍をモチーフにした「龍の歩道橋」を名乗っている徹底ぶり。たぶんまだ知られていない、かなり良質な「珍スポ」を発見することができました。

川西の東を流れる猪名川の河川敷まできました。
対岸は池田市。神戸の民にとって広い河川敷は見慣れぬ光景だ。
ドラゴンの長大遊具が見えてきました。確かに長い(長い)。
設置当初はこのループ部分も通ることができた、らしい。無謀、そして危険だ。
二匹の龍が連なっており、それぞれカラーリングが反転しています。歩いているとなぜか楽しくなってきます。
先端までいくと特になにもなく狭くなっておしまい。
滑り台ではしゃぐ田中さん。
龍の歩道橋。子供の頃旅行先で何故か欲しくなる竜のキーホルダーを思い出します。
歩道橋から生える竜の前脚。そして皆いい笑顔。

大王|川西の沼

ドラゴンランドで遊んでいたら、そろそろ17時。先ほど通りかかった中華料理「大王」が開店する時間になったので、まち歩きのゴールへと。

大きなのれんをくぐって店内に入ります。今日のまち歩きメンバー5人でちょうど満席になるくらいの店内。実質貸切とさせてもらいました。
現在は店主のおとうさんが一人で切り盛りされているとのこと。メニューが豊富で、おとうさんにおすすめを聞きながらあれこれ注文。田中さんからお勧めされた通り、確かにどれも美味しい!料理が出揃って手が空くと、おとうさんがバンバン我々の会話に切り込んできて、話の主導権を持っていかれます 笑。
若い頃は尼崎の珉珉で修行し、その後店名は違うものの、暖簾分け的なかたちで川西で独立。そこから40年ほどになるそうです。昔の武勇伝から、趣味の詩吟の話、健康法の伝授まで、とにかくずっとしゃべり続けてすごい。日中のまち歩きのことが全て頭から飛びそうになりました。

川西能勢口駅周辺を半日ぐるっとするだけで、路地、斜面地、不思議な市境、個性的なお店、古民家、珍スポ、濃いめの町中華と、まるで幕の内弁当のように、まち歩きの美味しい部分をギュッと凝縮して楽しむことができました。そして、どうして今のまちの姿になったのか分からないこともまだまだ多い。深く掘っていくと、ますます川西の沼にはまりそうな気がします。

先ほどの提灯のお店が中華料理「大王」。のれんで何のお店かとても明瞭。
一人でこの扉を開けるのは勇気が要るけど、今日は田中さんに続いて入店。
どれも美味しい。誰の口にでも合いそうな優しめの味でした。
おとうさんに何故か鉄鍋を降らされる田中さん。でも、この重い鍋をずっと振ってるお父さんのすごさがわかります。
外まで見送ってくれたおとうさん。川西に触れたら必ず思い出すであろう夜になりました。
川西能勢口駅周辺オススメのお店

BAKERY CINANO
兵庫県川西市小花1丁目5−14
営業時間:10時〜18時30分
定休日:日、月曜日

中国庶民料理  大王
兵庫県川西市小戸2丁目4−4
営業時間:11時30分〜13時、17時〜23時
定休日:火曜日



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